このコラムは、これからスペクトラムアナライザを使おうとされている方や、初めて導入を検討されている方、
なんとなく使っているけれどもう少し詳しく知りたいといった初心者から中級者の方々への入門的なものになっています。
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それでは本題へ。
現代は携帯電話や無線LANに代表されるデジタル無線通信が増えています。
従来のスペクトラムアナライザではこれらのデジタル無線通信信号の復調・解析が難しくなってきました。
そのため解析帯域幅(後述)を広げて、信号処理をA/D変換器とデジタル信号処理回路に置き換えたスペクトラム
アナライザが登場しました。さまざまなデジタル変調・通信信号解析などが行えるようになったため、従来のスペクトラム
アナライザと区別するためにシグナルアナライザと呼ぶようになりました。
乱暴に言いますとデジタル変調解析がいらなければスペアナ、必要であればシグアナといったところでしょうか。
ここではスペアナ、シグアナを選定・使用される際に必要な仕様や用語について簡単にご説明いたします。
本体内部の構造なと詳細については別の機会があればご紹介いたします。
これから「スペアナ」という言葉でご説明いたしますが、特に説明がない場合はスペアナ=シグアナとしてお考え下さい。
今までオシロスコープなど横軸が時間軸で縦軸が比較的大きな信号を扱っていた方からすれば、少し感覚が違うかも
しれませんが、スペアナでは縦軸が小さな信号(電力)ですので、dBmという単位を使用します。
dBm は1mWを基準とした絶対電力値です。
dBm= 10log10P 0dBm = 1mW
dBmは、1mWの電力を基準にしたときの電力比になりまして、例えば
0dBm =1mW
-10dBm=0.1mW
-20dBm=0.01mW
となります。これらにつきましては、計測器検索.com https://keisokukikensaku.com の変換ツールにて自動計算が
できますのでご参照ください。
ではなぜdBmを使うかといいますと、さきほど述べましたようにスペアナは非常に小さい信号を扱います。
スペアナ縦軸の範囲が 0.01 mW から 0.000000000001 mWと表示することはナンセンスですよね。dBmを使うと
-20dBm から -120dBm となり非常に扱いやすくなります。
また0.01mWを1/100,000(10万分の1)に減衰させるとしたら電力はいくつになるか?といった問題の場合でも、
0.01mW × 0.00001 = 0.0000001mW = 100pW(ピコワット) となりますが
dBmを使うと
(-20dBm) + (-50dB) = -70dBm となりたくさんの0を使わなくて済むので計算も簡単になります。
(*-50dBmと-50dBは電力と電力比で別の表記ですがここでは説明を省くために同じ扱いとしています)
これは文字通り皆さんが測定されたい周波数範囲になります。下限周波数も上限周波数も皆さんが必要とされる
周波数を確認のうえ選定ください。
またスプリアス測定の場合、測定する基本周波数の2倍や3倍等の上限周波数が必要となり場合があります。
スプリアス(不要信号)とは、主として高調波から成る設計上意図されない周波数成分のことで、通信を行う上で
必要のない「不要電波」「不要発射」のことです。
DANLとも表記されます Displayed Average Noise Levelの省略形です。
これはスペアナがどのくらい小さい信号まで測定できるかの目安になります。スペアナのディスプレイ上に表示される
ノイズフロアのレベルで、測定可能な最小信号レベルを表します。
たとえば皆さんが測定したい信号レベルの最大ピークが-130dBmの時
スペアナのノイズフロアのレベルが-120dBmであれば、そのスペアナのノイズに埋もれて-130dBmは見えなく
測定できないという事になります。ですので、皆さんがスペアナを選定される場合はこのDANLのスペックは重要です。
DANLの仕様は必ずRBW(後述)の条件が規定されています。RBWを1Hzと正規化した場合 3GHzの時のDANL
は-143dBm 等 とデータシートには記載されます。
実際に使用されるRBWの値によってDANLは変わってきますので、カタログにDANL-140dBmと記載があったと
しても常に-140dBmあるわけではありません。
各メーカの仕様書には、測定条件、周波数ごと、内蔵プリアンプON/OFFごとにDANLの仕様が記載されています。
記事の途中ですがここで
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では本編に戻ります↓
これはスペアナの選定の為というよりは、使用方法に関するファクターが強いのですが、重要なものなのでこちらで
説明いたします。RBWはResolution Band Widthの略で、スペアナ内部のIFフィルタの帯域幅のことを指します。
このフィルタの幅でスペアナの画面左から右へと掃引していきます。
スペアナでこのRBWの値を設定することになります。
基本的には、振幅対周波数の表示は、図1のように接近した信号でも識別されたものでなければなりません。
もし図2のようになるとしたら、信号は識別できなくなります。
RBWを設定することで、どれだけ接近した信号を分離して測定できるかが決定されます。
RBWを狭くすると、周波数分解能が向上するため、スペアナが表示するスペクトラムが鋭くなります。逆に包絡線を
見たい場合はRBWを広くします。RBWを狭くすればするほど、掃引速度が遅くなり、RBWを広くすればするほど、
掃引速度が速くなります。またRBWを1/10にするとノイズは10dB減少し、逆にRBWを10倍にするとノイズも
10dB増加します。
またよく似た言葉でVBW(Video Band Width)というものがあります。
これはスペアナのディスプレイに表示される前にビデオフィルター(ローパスフィルター)が入っていますが、
そのカットオフ周波数のことを言います。
信号の純度を表す尺度になります。 中心周波数から一定値離れた位置(オフセット周波数)における周波数成分で
表され、値が小さいほどノイズ成分の少ない信号といえます。
理想的な信号は、1本の垂直線で表れる単一の周波数でも、実際にはスペアナのノイズ成分等で、基本周波数の
近くに「スカート」のように広がったノイズが生じます。
位相ノイズは、搬送周波数からオフセット周波数だけ離れた点における1Hz帯域幅のノイズ電力と、キャリア電力との
比として規定されます。
位相ノイズの性能が悪いと近接した信号に妨害を与えてしまいます。
ここでは解析帯域幅について述べたいと思います。
冒頭でも述べましたが、この解析帯域幅内の信号を解析しますのでシグナルアナライザと呼ばれています。
測定周波数の範囲が9KHz~7GHzのモデルがあったとして、この周波数範囲全部を解析できるわけでは
ありません。解析帯域幅の範囲で解析を行います。
無線LANは2.4GHz帯とか5GHz帯を使っているなど、皆さんよく聞かれると思います。
詳しい規格の話は機会があればさせていただくとして、今回は簡単に説明させていただきますと
無線LANでは規格によって20MHzから160MHzの幅のチャンネルを使って通信を行っています。
また、5Gでは最大400MHzの帯域幅、車載用レーダーではGHzのオーダーの帯域幅など、
近年の通信では非常に広い帯域幅を使っています。
これらの帯域幅を解析できる幅のことを解析帯域幅と呼んでいます。
たとえば測定周波数範囲が9KHz~26.5GHz 解析帯域幅 400MHzのモデルの場合、
この9KHz~26.5GHzの間の任意の400MHzの幅の中を解析します。
従来の掃引型スペアナでは、分解能帯域幅の項で少し述べましたがIFフィルタの幅で
スペアナ画面左から右へ掃引して波形を表示しています。
極端にいいますとこのIFフィルタが通過していないとところで突発的に信号が
出た場合スペアナ画面には表示されないことになります。
リアルタイムスペアナは、高速処理(サンプリング等)とFFTを並列に行い、
突発的・間欠的な信号等見逃しやすい現象をシームレスに表示することが出来ます。
なおリアルタイムといいましてもスペアナの全周波数範囲をシームレスにというわけではありません。
さきほど解析帯域幅を説明いいたしましたが、同様にリアルタイム帯域幅というものがあります。
測定周波数範囲の中のリアルタイム帯域幅の部分(例えば160MHz幅)シームレスに表示することが出来ます。
リアルタイムスペアナの性能でPOI(Probability of Intercept:捕捉率)というものがあり、
これはその時間内では取りこぼしがないという指標になります。
掃引式スペアナとリアルタイムスペアナの見え方の違い動画
スペアナ 掃引式とリアルタイムの見え方の違い - YouTube
まずはメーカーの取り扱い説明書は読みましょう。特に安全についての部分はご注意ください。
過大入力についてもご注意ください。スペアナ入力部分には全てのエネルギーが入力されます。
測定画面から外れていても、エネルギーは入力されます。
例えば測定画面は500MHzから3GHzで過大入力はなさそうに見えても、
30MHzあたりで非常に大きい信号が入力されてしまうと、スペアナが壊れてしまう可能性があります。
入力する信号の大きさを知っておく必要がありますね。
またアッテネータを最適になるように調整することも必要ですね。
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