このコラムは信号を出力する信号発生器の中でも 特に高周波のRF電力信号を出力するシグナルジェネレータについて書いています。
これからシグナルジェネレータを使おうとされている方や、初めて導入を検討されている方、なんとなく使っているが仕様などについてもう少し詳しく知りたいという初心者から中級者の方々への入門的なものになっています。
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前置きとしてシグナルジェネレータの名称は様々で信号発生器やSG等とも呼ばれますが 本ページではシグナルジェネレータで統一しております。
【目次】
6-4.EVM(Error Vector Magnitude)
ひとことで信号発生器(SG)と言いましても色々な種類のものがあります。
装置におけるテスト信号源として利用され、また5Gや6Gをはじめ、Wi-Fi、無線通信や放送、オーディオ、標準信号などその他多くの目的に使われます。
周波数も低周波から高周波までありますし、アナログ信号発生器やデジタル信号発生器(ベクトル信号発生器)というように分けられたりもします。
まず低周波と高周波についてごく簡単に説明します。
「何ヘルツ以上が高周波である」という定量的な定義があるわけでは無く、高周波または無線周波数(RF)と呼ぶかどうかは用途によって違います。
電子回路では数10kHz程度であっても低周波に分類される事もあれば、無線通信で使用される場合は10kHz以上が高周波と呼ばれています。
また波長が電子回路の大きさに比べて十分に大きいと低周波回路、逆に小さくなると高周波回路として扱われます。
例えば10MHzの信号の波長は30mですが10GHzの信号の波長は3cmです。
高周波(回路)になればなるほど信号の波長に対してケーブルなどの電子部品が相対的に大きくなり、位相や振幅を無視できなくなります。
従って高周波信号を扱う場合と低周波信号を扱う場合では全く同じ電子回路でも挙動が異なります。
扱う信号の周波数が高くなると電子回路の場所によって信号の電流電圧レベルが異なる状況を考慮する必要が出てきます。
一方で低周波回路は電子回路全体が均一の電流電圧レベルとして近似できます。
これらの理由から以下に説明する種類の信号発生器について、低い周波数を扱うものはハイインピーダンスで電圧表示、高周波のものは50Ωで電力(W、dBm)表示になっています。
では大まかに信号発生器の種類について説明いたします。
①ファンクションジェネレータ(FG)
サイン波、三角波、矩形波やパルス波などを周波数や電圧を変えて出力します。
電圧で出力します。
②任意波形発生器(AWG)
ファンクションジェネレータに加え、ユーザーが自由に波形を生成して出力できます。
電圧で出力します。
③パルス/パターンジェネレータ
高速の立上り信号が必要な場合やロジック信号を出力します。
電圧で出力します。
④RF/マイクロ波アナログシグナルジェネレータ(アナログSG)
CWやAM、FM変調など、アナログ信号を出力します。(CW、AM、FMについては後述)
電力で出力します。
⑤ベクトルシグナルジェネレータ または デジタルシグナルジェネレータ(ベクトルSG/デジタルSG)
携帯電話や無線LAN、デジタル通信の信号を生成・出力します。
電力で出力します。
なお①②③はワンボックスに集約され、1つの製品としてファンクションジェネレータとして販売されている物もあります。
また④⑤でも①②③の機能を持っている物もあります。
さて本題の④RF/マイクロ波アナログシグナルジェネレータと⑤ベクトルシグナルジェネレータについて述べていきます。
*①、②、③についてはまたの機会に。
基本は皆さんがどのような信号を出力させたいのか?という事になりますが、その使い方・選択の目安になれば幸いです。
キーサイト・テクノロジー Keysight
ローデシュワルツ Rohde&Schwarz
アンリツ Anritsu
シグレント SIGLENT
マイクロニクス MICRONIX
シーイヤー Ceyear
リゴル RIGOL
などなど
記事の途中ですがここで
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では、本編に戻ります。↓
これから説明のシグナルジェネレータ(SG)については変調(アナログ変調とデジタル変調)という言葉が出てきますので、先にその説明を簡単にいたします。
まず変調というのは、音声や映像、データなどを遠くに送信する為に電波(周波数)にのせる事ことです。
今回は説明いたしませんが、この電波(周波数)にのった信号から元の音声や映像、データに戻すことを復調といいます。
これは昔からある変調方式で、AM(Amplitude Modulation 振幅変調)、FM(Frequency Modulation 周波数変調)、PM(Phase Modulation 位相変調)などがあります。
名前の通りAM変調は送信したい信号を搬送波(送信に使う高周波信号)の振幅の大小で伝送し、FM変調は搬送波の周波数変化で伝送し、PM変調は搬送波の位相変化で信号を伝送します。
具体的な用途としてはAMラジオやFMラジオ、業務無線などで使われています。
下記はAM変調とFM変調のイメージです。
アナログ(波型)の信号を搬送波にのせるアナログ変調に対して、元の信号をデジタル信号(0と1)として搬送波にのせるものがデジタル変調です。
デジタル信号で変調する方式は、ASK(Amplitude shift keying 振幅偏移変調)、FSK(Frequency shift keying 周波数偏移変調)、PSK(Phase shift keying 位相偏移変調)、QPSK(Quadrature PSK 4位相偏移変調)などがあります。
携帯電話や無線LAN、近年の無線通信はこのデジタル変調を使っています。
それぞれ簡単に説明します。
ビット「1」の時に電波を出し、ビット「0」の時に電波を出さなければ、電波で0と1を飛ばすことが出来ます。
日本語では振幅偏移変調と呼ばれています。ただ、「0」ばかりの情報が連続した場合には、受信側でこれが「連続した0の情報」か、それとも「電波が途絶えた」か、「装置が壊れた」のかが判断できません。
「0」と「1」を信号の有無ではなく違う周波数の電波に割り当てます。
例えば「0」の時は5MHz、「1」の時は10MHz というようにします。
こうすれば「信号の 0」と「機器の故障や不具合」を別々に捉える事ができます。
周波数偏移変調と呼ばれます。
同じ周波数の搬送波を伝送信号の「0」「1」に応じて位相をずらします。
例えば180度の位相変調の場合、「0」「1」に応じて波形の山と谷が入れ替わります。
位相偏移変調と呼ばれます。
この180度の位相偏移変調の場合は2つの位相を使うということで、BPSK(Binary Phase Shift Keying)と呼ばれます。
これまでに出てきた変調は「0」と「1」という2つの状態の伝送でしたが、4つの位相を使うQPSK(Quarter Shift Keying)については位相変調角が90度単位なので変調波形は4つの位相を取り得ます。
つまり1単位の波はもはや「0」と「1」という2つの状態(1bit)に対応するのではなく「00」「01」「10」「11」という4つの状態に対応しますので2bitのデータを送れる事になり伝送効率が向上します。
より情報密度を詰め込むために開発されたのが直角位相変調 QAM(Quadrature Amplitude Modulation)です。
QAMはQPSKにASK(振幅位相変調)を取り入れることでさらに情報量を増やしたものです。
PSKやQAMなどの変調の様子は位相図で描かれることが多いです。
位相を360度で表現するとBPSKで0°と180°の2点を指し、QPSKでは0°、90°、180°、270°の4点を指していると解釈できます。
このような位相図をコンスタレーション(Constellation)と呼びます。コンスタレーションとは「星座」のことです。
実際に使われているQAMは同心円状ではなく、コンスタレーションが格子状になる矩形QAM(Rectangular QAM)で4×4ポイントの16QAM(4bit)、8×8ポイントの64QAM(6bit)が主用されています。
例えば64QAMを見るとあたかも64個の0/1情報が並行して送られているように勘違いしてしまいがちですが、コンスタレーション図は「ある時間における電波の状態が64点のうちどこか1点を指す」ことを示しておりこれによって64パターン(6bit)の情報を1度に送ることができる、ということを意味します。
特に高速を必要とする場合には16×16ポイントの256QAM(8bit)も使用されます。
少し変調の話が長くなりましたが、ここからアナログシグナルジェネレータについて述べたいと思います。
出力信号はCW(Continuous wave 変調の無い連続したシンプルな正弦波)、アナログ変調波 などになります。
主な用途としては、基準信号発生器、テスト回路などで基準信号として用いられている水晶発振器の代替、アンプやフィルターなどの特性評価、レーダー信号などです。
またEMC/EMSでは規格に定められた試験周波数および試験レベルの妨害波信号として使用され、その信号をアンプ経由でアンテナより輻射し試験対象製品の誤作動の評価を行います。
これは皆さんが必要とされる上限・下限の周波数と出力の事ですが、いくつか注意点があります。
例えば最大周波数が3GHzで最大出力が+10dBmのアナログSGを探す場合の注意点です。
(他の仕様はここでは無視します)
各メーカーのカタログには最大周波数3GHz 最大出力+10dBm と記載されている場合もその機種のデータシートや仕様書をよく確認してください。
意地悪な言い方ですが 3GHzの設定をした場合に+10dBm出力できるとは限らないからです。
これは架空のアナログSGの仕様書ですが
周波数 100kHzから100MHzまで 最大出力+5dBm +7dBm(代表値)
周波数 100MHzから1GHzまで 最大出力+10dBm +12dBm(代表値)
周波数 1GHzから3GHzまで 最大出力+8dBm +10dBm(代表値)
メーカーが保証しているのは最大出力の数値で、代表値というのは保証外の数値になります。
なので今回の例の場合は3GHzで安心して10dBmでは使えないという事になります。
ですので機種選定時の対象機種についてはデータシート、仕様書をよく確認してください。
また変調をかける場合、その時の仕様も確認ください。
信号の純度を表す尺度になります。
中心周波数(出力設定した周波数)から一定値離れた位置(オフセット周波数)における信号のレベルで表され、値が小さほどノイズ成分の少ない信号出力といえます。
理想的な信号出力はスペアナで見た時に一番下から一番上までまっすぐな1本の直線のようになるべきではありますが、実際にはSG本体のノイズ成分などで中心周波数の近くにスカートのように広がったノイズが生じます。
位相雑音(ノイズ)は搬送周波数からオフセット周波数だけ離れた点における1Hz帯域幅のノイズ電力とキャリア電力の比としてdBc/Hzで規定されます。
変調のところでも説明しましたがこちらはデジタル変調方式に対応した信号発生器です。
なおベクトルシグナルジェネレータもデジタルシグナルジェネレータも呼び方の違いだけで同じ物です。
デジタル通信規格の携帯電話や無線LAN規格、Bluetooth、GNSSなどの信号も出力できます。
主な用途としては無線機器、携帯電話端末などの受信感度試験、GNSSシミュレータ、アンプやフィルターなどの特性評価 EMC/EMSになります。
この部分についてはアナログSGと同じになりますのでそちらを参照してください。
この部分についてはアナログSGと同じになりますのでそちらを参照してください。
この仕様はベクトルシグナルジェネレータ(デジタルシグナルジェネレータ)ならではの仕様になります。
無線LANは2.4GHz帯や5GHz帯を使っているなど皆さんよく聞かれると思います。
詳しい規格の話は別の機会にさせて頂くとして、今回は簡単に説明すると無線LANでは規格によって20MHzから160MHzの幅のチャンネルを使って通信を行っています。
SG無線LANの信号を出力するとなると当然その幅の出力が必要になります。
その幅の事を変調帯域幅と呼んだりします。
例えばXX通信規格の使用周波数が1000MHz~1040MHzまで40MHzの幅で通信しているのならSGも40MHz以上の変調帯域幅の製品が必要になるという事です。
この仕様はデジタル変調信号の性能を評価する為に使用される誤差に関する指標です。
その値は理想的な信号と測定された信号の差を数値化したものです。
デジタル通信では多くの場合、変調はI及びQによって表されます。
極座標ダイアグラムではI軸は0度の位相基準にありQ軸は90度回転します。
信号ベクトルのI軸への投射がI成分、Q軸への投射がQ成分となります。
簡単に言うと前述の同心円状のコンスタレーションの点からどのくらいずれてしまうか?という事を表しています。
まずは取扱説明書を読みましょう。特に安全についての注意は必ず確認してください。
また、当たり前の事ですがSGは信号を出力するものなので信号を入力しないようにしてください。
意外かもしれませんがこれで故障するパターンが一番多いように感じます。
システムに組み込んでいる場合は、その測定システムの切り替え時にSGに信号が流れ込まないように注意してください。
静電気にも注意が必要で、人体からの静電気もそうですが接続するDUTなどから静電気の影響がある場合もあります。
DUTと接続状態で電源を投入しないようにしてください。ハイパワーがDUTに印加され壊してしまう可能性があります。
また使用終了時にはSGの出力をOFFにする、または最小レベルにしておくことで次回使用する際にハイパワーでの出力防止になります。
出力する周波数によってコネクタの種類も変わっってきますのでそれに合わせたケーブルも必要です。(N型、SMA、3.5mmなど)
コネクタの種類や特徴については次回にご紹介します。
計測器検索.comでは周波数帯域やパワーなどを入力する事により簡単にシグナルジェネレータ(SG)を検索する事が可能です。
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